事業内容

糖鎖科学と糖鎖医療の革新的な技術から生まれた糖鎖バイオマーカー/体外診断薬(IVD)は、人々の健康に貢献します。

研究開発

糖鎖医学

糖鎖は、脂質、タンパク質、低分子または高分子化学物質などの生体分子を修飾することが知られています。糖鎖付加は、糖転移酵素とその基質・受容体によって制御されており、細胞の分化、発生、加齢、病気、個人の遺伝的背景などの条件によって影響を受けます。すなわち、糖鎖は優れた指標「グライコバイオマーカー」として適しています。

糖鎖科学では、生化学や分子生物学に加え、工学に基づいた新しい技術が医学の新しい知見を促進しています。例えば、タンパク質の糖鎖構造の変化は発がんや浸潤、転移などのそれぞれ関わるがん細胞の共通の特徴として現れます。糖鎖と糖タンパク質の研究である「グライコミクスとグライコプロテオミクス」は、ポストゲノム・ポストプロテオミクス時代の新分野となっています。

当社会長の成松 久は、国立研究開発法人産業技術総合研究所の糖鎖医工学研究センター長を務め、糖質科学研究の様々な技術開発に携わりました。例えば、糖鎖遺伝子の発現プロファイリング、糖タンパク質の糖鎖構造解析、目的糖タンパク質に結合する糖鎖構造の同定などの様々な技術があります。これらの技術を駆使して、がんや感染症の糖鎖バイオマーカーを開発することに成功しました。当社は、そのノウハウを受け継ぎ、新規バイオマーカーや体外診断薬の開発へ応用しています。現在の研究対象は、炎症、感染症やがんなどで、糖鎖の変化を検出するものです。

参考文献:

Angata K, Sawaki H, Tsujikawa S, Ocho M, Togayachi A, Narimatsu H.
Glycogene expression profiling of hepatic cells by RNA-Seq analysis for glyco-biomarker identification.
Front Oncol. 2020 Jul 28;10:1224. doi: 10.3389/fonc.2020.01224.

Narimatsu H.
Development of M2BPGi: a novel fibrosis serum glycobiomarker for chronic hepatitis/cirrhosis diagnostics.
Expert Rev Proteomics. 2015;12(6):683-93. doi: 10.1586/14789450.2015.1084874.

Ito H, Kuno A, Sawaki H, Sogabe M, Ozaki H, Tanaka Y, Mizokami M, Shoda J, Angata T, Sato T, Hirabayashi J, Ikehara Y, Narimatsu H.
Strategy for glycoproteomics: identification of glyco-alteration using multiple glycan profiling tools.
J Proteome Res. 2009 Mar;8(3):1358-67. doi: 10.1021/pr800735j.

Narimatsu H, Kaji H, Vakhrushev SY, Clausen H, Zhang H, Noro E, Togayachi A, Nagai- Okatani C, Kuno A, Zou X, Cheng L, Tao SC, Sun Y.
Current technologies for complex glycoproteomics and their applications to biology/disease- driven glycoproteomics.
J Proteome Res. 2018 Dec 7;17(12):4097-4112. doi: 10.1021/acs.jproteome.8b00515.

Narimatsu H, Sawaki H, Kuno A, Kaji H, Ito H, Ikehara Y.
A strategy for discovery of cancer glycobiomarkers in serum using newly developed technologies for glycoproteomics.
FEBS J. 2010 Jan;277(1):95-105. doi: 10.1111/j.1742-4658.2009.07430.x.

B型肝炎ウイルス

B型肝炎ウイルス(HBV)は、最も多くの人に感染しているウイルスの一つであり、世界的な健康問題となっています1。HBVのエンベロープタンパク質は、PreS1、PreS2、S-ドメインを含むHBs抗原(HBsAg)遺伝子から作られる3種類の表面抗原、S-、M-、L-HBsAgから構成されています2。HBsAgは、N型糖鎖やO型糖鎖などの糖鎖によって修飾されていますが、糖鎖はウイルスの分泌や安定性に関与しています3,4。最近の糖鎖工学の進歩により、それぞれのHBsAgにおける糖鎖形成の違いが明らかになりました。日本や中国などの東アジアで多く見られる遺伝子型CのHBVでは、遺伝子型AやBと異なる特徴があります。M-HBsAgとL-HBsAgには共通のPreS2ドメインが存在し、M-HBsAgのPreS2にはO型糖鎖が存在しますが、L-HBsAgのPreS2にはO型糖鎖がほとんど含まれていません5,6。O型糖鎖を含むM-HBsAg を特異的に認識する抗体は、HBsAg糖鎖異性体に対する組換えモノクローナル抗体(HBsAgGi)としてクローニングされ、当社から入手可能です。
> 研究用試薬/受託サービス」ページ

HBsAgGiの開発で使用した技術
  • 糖鎖の構造を特定するグライコーム解析
  • 糖ペプチドの合成
  • HBsAg糖タンパク質の作製
  • 組換えモノクローナル抗体の作製

HBVにおける我々のターゲット
HBV感染患者の血中において、HBV DNAを含む感染性HBV粒子(Dane粒子)は、HBV DNAを含まない非感染性サブウイルス粒子(SVP)よりもはるかに量が少なく、Dane粒子<<<SVPという状態です。感染性HBVの存在を確認するためには、非感染性のSVPを含むHBV粒子全体を測定するよりも、Dane粒子のみを測定する技術の方が効率的で正確です。現在、慢性B型肝炎患者に対して逆転写酵素の阻害剤である核酸アナログ(NA)治療が承認されていますが、NA治療によりHBV DNAが減少し、代わりにHBV RNAを含む感染性HBV粒子が増加することが報告されています7。このため、HBV RNAを含むHBV粒子を簡便に測定する方法が必要です。
HBsAgGiは遺伝子型CのM-HBsAgのPreS2ドメインを認識するため、HBsAgGiを用いた以下の実験に使用可能です。

HBsAgGiを使用したIVD

  • HBV DNAを含むHBV粒子
    測定
  • HBV粒子を捕捉してHBV DNA/RNAを測定する
  • NA治療下のHBV RNAを含むHBV粒子の測定
  • Sドメインに変異を持つオカルトHBVの測定
  • cccDNAとの相関性
  • がんとの相関

参考文献:

1. https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hepatitis-b
2. Schadler and Hildt (2009) Viruses 1:185-209. doi: 10.3390/v1020185.
3. Schmitt et al. (2004) J Gen Virol 85:2045-2053. doi: 10.1099/vir.0.79932-0.
4. Dobrica et al. (2020) Cells 9:1404. doi: 10.3390/cells9061404.
5. Wagatsuma et al. (2018) Anal Chem 90:10196-10203. doi: 10.1021/acs.analchem.8b01030
6. Angata et al. (2021) Biochim Biophys Acta Gen Subj. In Press. doi:10.1016/j.bbagen.2021.130020
7. Wang et al. (2016) J Hepatol. 65:700-710. doi: 10.1016/j.jhep.2016.05.029.


研究開発担当:山田 洋介(研究開発部長)

 2012年  千葉大学 医学薬学府博士課程修了(薬学博士)
 2012年~ 大正製薬株式会社入社(創薬化学研究室、創薬技術研究室)
 2017年  米国Vanderbilt大学留学
 2021年~ 株式会社キュライオ入社(創薬化学研究室長)
 2022年  東京都立大学 経営学修士課程修了(経営学修士)
 2024年~ 現職

  • これまでに国内製薬企業にて約10年および国内バイオベンチャーにて約3年の医薬品研究開発の経験を有し、感染症領域を含む複数の創薬プロジェクトをリード。
  • 創薬ステージとしては初期の探索段階から開発化合物同定、およびその後の前臨床試験段階の経験を有し、物質特許および製法特許等の取得実績がある。
  • 英国および仏国の企業との共同研究も主導し成功に導くなど、創薬領域での実績を有する。

主要論文・特許:

・Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 29, (2019), 2670-2674
・Journal of Medicinal Chemistry, 63, (2020), 14805-14820
・Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 50, (2021), 128342
・WO2014/199960
・JP2016/199499
・WO2018/216822
・WO2018/216823

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