B型肝炎ウイルス

B型肝炎ウイルス

B型肝炎ウイルス(HBV)は、最も多くの人に感染しているウイルスの一つであり、世界的な健康問題となっています1。HBVのエンベロープタンパク質は、PreS1、PreS2、S-ドメインを含むHBs抗原(HBsAg)遺伝子から作られる3種類の表面抗原、S-、M-、L-HBsAgから構成されています。HBsAgは、N型糖鎖やO型糖鎖などの糖鎖によって修飾されていますが、糖鎖はウイルスの分泌や安定性に関与しています3,4。最近の糖鎖工学の進歩により、それぞれのHBsAgにおける糖鎖形成の違いが明らかになりました。日本や中国などの東アジアで多く見られる遺伝子型CのHBVでは、遺伝子型AやBと異なる特徴があります。M-HBsAgとL-HBsAgには共通のPreS2ドメインが存在し、M-HBsAgのPreS2にはO型糖鎖が存在しますが、L-HBsAgのPreS2にはO型糖鎖がほとんど含まれていません5,6。O型糖鎖を含むM-HBsAg を特異的に認識する抗体は、HBsAg糖鎖異性体に対する組換えモノクローナル抗体(HBsAgGi)としてクローニングされ、当社から入手可能です。

HBsAgGiの開発で使用した技術

  • 糖鎖の構造を特定するグライコーム解析
  • 糖ペプチドの合成
  • HBsAg糖タンパク質の作製
  • 組換えモノクローナル抗体の作製

HBVにおける我々のターゲット

HBV感染患者の血中において、HBV DNAを含む感染性HBV粒子(Dane粒子)は、HBV DNAを含まない非感染性サブウイルス粒子(SVP)よりもはるかに量が少なく、Dane粒子<<<SVPという状態です。感染性HBVの存在を確認するためには、非感染性のSVPを含むHBV粒子全体を測定するよりも、Dane粒子のみを測定する技術の方が効率的で正確です。現在、慢性B型肝炎患者に対して逆転写酵素の阻害剤である核酸アナログ(NA)治療が承認されていますが、NA治療によりHBV DNAが減少し、代わりにHBV RNAを含む感染性HBV粒子が増加することが報告されています7。このため、HBV RNAを含むHBV粒子を簡便に測定する方法が必要です。
HBsAgGiは遺伝子型CのM-HBsAgのPreS2ドメインを認識するため、HBsAgGiを用いた以下の実験に使用可能です。

HBsAgGiを使用したIVD

  • HBV DNAを含むHBV粒子測定
  • HBV粒子を捕捉してHBV DNA/RNAを測定する
  • NA治療下のHBV RNAを含むHBV粒子の測定
  • Sドメインに変異を持つオカルトHBVの測定
  • cccDNAとの相関性
  • がんとの相関
参考文献:
1. https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/hepatitis-b
2. Schadler and Hildt (2009) Viruses 1:185-209. doi: 10.3390/v1020185.
3. Schmitt et al. (2004) J Gen Virol 85:2045-2053. doi: 10.1099/vir.0.79932-0.
4. Dobrica et al. (2020) Cells 9:1404. doi: 10.3390/cells9061404.
5. Wagatsuma et al. (2018) Anal Chem 90:10196-10203. doi: 10.1021/acs.analchem.8b01030
6. Angata et al. (2021) Biochim Biophys Acta Gen Subj. In Press. doi:10.1016/j.bbagen.2021.130020
7. Wang et al. (2016) J Hepatol. 65:700-710. doi: 10.1016/j.jhep.2016.05.